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「この人のようなものづくりに対する姿勢と感性で、作品を創りたい!」
ルーシー・リーは、私が初めてVINA AMUUを立ち上げるときに、少しでも近づきたい人として、コンセプトの中心に置いた人でした。

VINA AMUUの最初のコレクションのテーマ「凛として美しいもの」は、ルーシー・リーの器のイメージから浮かんだ言葉です。

まっすぐでいて、同時にたおやかなもの。
その奥に生命の持つ力強さを宿しているもの。
相反するものを内に含み、絶妙なバランスを保ったもの。
瑞々しい感性を、精確に表現したい。

これは私のルーシー・リーへのオマージュです。彼女のものづくりのスタンスに憧れ、わずかでも近づけたらいいなと思い、毎回コレクションを開いています。感性だけではなく、霊的な意味でも、とてもインスパイアされていると思います。本当に美しいものは、言葉など必要ないのだと思います。

彼女は、釉薬の配合などを科学実験のように細かく正確にノートに記録しています。この細かい作業の下積みが、一見シンプルな彼女の作品に、生命の息吹と存在感を与えているのだと思います。

先日偶然TVでルーシー・リーの特集をしているのを見ました。その中で、印象に残ったのは、ルーシーは、いつも自分に問い続けていたそうです。「陶芸ってなんだろう?」と。90歳になるまで数十年も陶芸に携わってきた人でも、つねに問い続けていたんだと知り、とても励まされました。

私もデザインしているときは、つねに問いかけながら、試行錯誤しながら、進めています。コンセプトの中にもそれを書いています。

デザインをするときに私は問いかけます。
私は何を表現したいのだろう?
その形の奥に流れているものは何?
それはいったいどのような形?
それによって何が開いていくのだろう?

いつもいつもこの作業を粘り強くやるしかないのです。このような、じっくりそれに向き合っていく地味な作業をずっと続けてきました。形になるまでは、一人孤独に修行をしているようなもので、時々ねをあげたくなることもあります。何となく閃くものに従ってコツコツとに遺跡の中から、土器の破片を探し出すような作業のようなものです。

実際に形にするには、核となるものにどんどん肉付け(結晶化)していかなければならず、それが最初のイメージに、一致しているかをつねに確かめる必要があります。

形にしていくプロセスで、さまざまな石達に出会い、インスピレーションを与えられ、メーカーさんに一番ふさわしい製造方法を教わりと、たくさんのコラボレーションの輪が出来てきます。そうなってくると楽しくなってきますが、私はそれまでの一人の作業を、とても大切にしています。

ジュエリーを作ることは、自分と対話することから始まります。私にとっては毎回が新しい冒険であり、新しいスタートにもなっています。

参考リンク・株式会社ヒュース・テン(出版)オンラインショップ
     ・ルーシー・リー書籍紹介ページ